足場の最高 高さ

ビケ足場は、最高何メートルまで組み立てることができますか

(2014年6月20日掲載 / 2015年9月18日加筆訂正)

足場の最高高さ
 ビケ足場は当初、住宅工事用足場として普及した経緯から、低層工事に用いる足場という認識がありました。 しかし、その安全性が広く認められるとともに、作業性や利便性の高さから中層建築工事でも広く使用されるようになりました。 そこで、仮設工業会は、「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」(以下、技術基準という)を2003年に制定し、それまで、住宅のような小規模な建築物の建築工事に限定していたくさび緊結式足場の用途枠を中高層建物の建築工事にも広げ、高さ31mまでの足場を組立可能としました。 さらに2015年、技術基準を改定し、従来、わく組足場の最高高さとされた45mまでの足場にも使用範囲を広げました。 一般的には、そこに定められた数字を最高高さと考えることができます。
 技術基準は、くさび緊結式足場をその用途に従ってビル工事用足場と住宅工事用足場に分け、それぞれにについて組立基準を定めています。 ビル工事用足場は、高さ45m以下のビル工事等の建設工事に使用される足場をいい、住宅工事用足場は、軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅の建築工事に使用される足場をいいます。 つまり、ビル工事用足場の組立基準に従って組立てたビケ足場については、高さ45mまでの建築物に使用することができます。
 ところで、1972年制定の労働安全衛生規則は、単管足場を31mを超えて組み立てる場合、「建地の最高部から測って31mを超える部分の建地は、鋼管を2本組とすること」としていました。 2015年の規則改正で、これに但し書きが付与され、「建地の下端に作用する設計荷重(足場の重量に相当する荷重に、作業床の最大積載荷重を加えた荷重をいう。)が当該建地の最大使用荷重(当該建地の破壊に至る荷重の2分の1以下の荷重をいう。)を超えないとき」は2本組とすることを要しないとしました。
 同様に、技術基準も31mを超えて足場を組立てる場合は、原則として建地を2本組にすることとしています。 また、その解説で、2本組を要しない場合について安全衛生規則の規定を準用しています。
 2本組にすることを要しない場合の設計荷重には幅木やメッシュシート、朝顔などの重量も含まれます。 また、建地の最大使用荷重は、「現場での使用条件と近い条件における実大実験を行い、その結果から得られた破壊荷重の1/2以下(安全率2.0以上)の荷重を用いることができる。」(同解説)としています。
 2本組は、「技術基準」に従って、建地にかかる座屈荷重(圧縮による支柱のたわみ)への抵抗力が効果的に増加するように行うことが必要ですが、この場合、支柱の支持力は約1.3倍まで増加するとしています(技術基準・解説)。
 なお、日本工業規格の旧規格では、枠組足場は原則として45mを超えてはならないという規定がありました(旧JISA8951)。 このため、一般的に、45mを足場の高さの上限とすることが多いようですが、独自に荷重計算を実施する等の方法によって足場の強度を検証した場合は、45mを超えて足場を組立てることも不可能ではありません。
 ところで、足場の高さは、ビル工事用足場と住宅工事用足場が違うように、足場の組立方法と一体のものとして考える必要があります。 ビケ足場が45mの高さの建築物まで使用可能といっても、簡易な構成の足場を組立てた場合に、その高さに耐えうる保証はありません。 (文・松田)
【参考】
くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
第1章 総則

1.適用
「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は、一般社団法人仮設工業会(以下、「仮設工業会」という。)が定める「くさび緊結式足場の部材及び附属金具」の認定基準に適合し、認定を受けた専用の部材等を用いて高さ45m(建地補強含む)以下の足場を組み立て、解体及び使用する場合について適用する。
2.定義
くさび緊結式足場とは、「くさび緊結式足場の部材及び付属金具」の認定基準に適合し、認定を受けた部材を使用し、組立てられる足場をいう。
(1) ビル工事用くさび緊結式足場
くさび緊結式足場のうち、ビル工事等の建築、補修及び解体工事等に使用されるもので、高さ45m以下で使用する本足場をいう。
(2) 住宅工事用くさび緊結式足場
くさび緊結式足場のうち、軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅の建築、補修及び解体工事等に使用される足場をいう。
第2章 ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用基準
1.組立基準
(14) 高さ31mを超える場合
足場の高さが31mを超える場合には、次の措置を施すこと。
① 建地となる緊結部付支柱の最高部から測って、31mを超える地上までの緊結部付支柱は原則として2本組とする。
② 2本組は緊結部付支柱と足場用鋼管を緊結金具により堅固に固定する。
③ 固定する緊結金具は、足場用鋼管の上端部、下端部及び各層の腕木付近に取付ける。