ビケ足場とCAD

CAD図面作成サービスとはどういうものですか

(2016年6月7日 掲載)

●足場CAD開発の現状と課題
 ビケ足場の施工計画図(足場図面)をCADで作成するという計画は、ビケ足場の開発当初から存在していたと推測しています。 実際、ビケ足場の製造メーカーには30年近く前からCAD開発の担当部門がありました。また、約15年前にはビケ足場専用のCADソフトが市販されるに至っています。
 しかし、これらの計画は残念ながら有用性を見出すにはいたっていません。
 このCAD開発には、コンピュータの自動計算機能という側面が付帯していたようです。 ボタン一つで、足場図面を作成し、願わくば使用部材の積算や足場の構造計算まで一気にやってしまおうという夢のような計画です。
 こんにち、建築分野で広く使用されている汎用のCADソフトには、AUTO CADやフリーソフトのJw_cadなどがありますが、これらは、基本的には製図支援ツールで、人間が行う設計や製図を支援する機能しかありません。 そもそも、部材の積算や強度計算はともかく、住宅建築のように多様な現場環境で、個性的で複雑な形状の建築物に対してコンピュータが足場図面を作成してくれるというのは少し、荷が勝ちすぎている気がします。
 足場図面の作成は、熟練した施工スタッフであれば、30分ほどで部材の積算まで完了してしまうことも多く、コンピュータによる省力化にどれほどの意義があるかにも疑問を感じざるを得ません。
 とはいえ、自己進化型の人工知能が囲碁の世界で名人を打ち負かす時代です。自動計算CADの開発が不可能であると断じることはできません。
 足場CADの開発がうまくいかなかったのは、むしろ、開発コンセプトの希薄さに由来しているのではないかと思います。
 一般に、システム化やコンピュータによる人間労働の代替は、業務改善の手段として進められるものです。 たとえば、流通業界のPOSシステム(販売時点情報管理)は、販売実績情報をタイムリーに把握し、在庫管理や商品開発などの経営判断に資するデータを提供するために導入されました。
 システム化は、経営の改善という目的を達成するひとつの手段であって、別の方法で達成可能であれば、その方法に固執する必要はありません。たんに、人間の作為をコンピュータに置き換えるだけでは多くを望めません
 足場CADの開発には、こうした開発コンセプトが欠如していたがために中途半端に終わったように思います。
 ところで、設計は品質をつくり込む行為です。最適な足場計画図が作成できないと、満足する足場品質を期待できません。現状では、足場計画図の作成が足場の施工スタッフの力量に依存しているということが少なくありません。 そうであれば、施工品質を標準化するために、設計段階での最適化の方策を探ることは重要です。 足場CADの開発はこのシナリオの中で再検討する必要があると思います。

【図1】
現場調査によって作成した図面
●Jw_cadを業務の改善に活用する
 足場の実務では、ネット上から無償でダウンロードできるJw_cadが利用されていることが少なくありません。 当社でも、このJw_cadを業務ツールとして活用しています。
 足場の施工現場では、事前に現地調査を行います。とくに、リフォーム現場は、建物の図面が用意されていないことが多々あります。また、狭あいな敷地に障害物が所狭しと並んだような複雑な現場状況に直面することがあります。
 当社では、リフォーム現場の現地調査報告書(建物と敷地状況を表した図面に注意事項や指示事項を記載したもの)の作成にJw_cadを活用し、業務の標準化を推進しています。
 CAD利用の利点は、次のとおりです。

  1. 正確な図面をわかりやすく作成できる。
  2. 紙ベースのデータ保存を要しないので、省スペースになる。
  3. 作成途中での手計算の手間が省ける。
  4. 熟達することによって作業時間の短縮が可能になる。
  5. 建物の基本寸法(モジュール)に合わせて目盛間隔を設定できる。
  6. そのまま足場計画図のCAD図面に流用できる。

【図2】
足場計画図
 建物の基本寸法(モジュール)に合わせて目盛間隔を設定できるとはどういうことでしょうか。
 建物には基本寸法があります。代表的なのは、古来の尺貫法から派生した尺モジュールで910㎜が基本単位です。このほか、900や960のモジュール単位や1メートルを基本単位としたメーターモジュールがあります。
 これらの基本単位に合わせてCADの目盛間隔を設定することで、建物の作図が容易になるほか、図面を合理的に把握することができます。
 図1を参照してください。わかりやすいようにモジュールの芯を黒丸点であらわしています。出窓や中間庇、勝手口などの位置は、このモジュールの芯を基準に配置されています。
 調査報告書として完成した図面は、足場計画図の作成にそのまま、流用できます。
 足場計画図の作成では、足場のジャッキベース(支柱)が位置する4隅の1か所を指定します。ビケ足場の水平方向は300の倍数になるので、今度は、それを基点に300の目盛間隔を画面に設定します。 水平方向に6目盛で1800スパンです。
 図2は、足場計画図に、ビケ足場の部品データを張り付けたものです。部品データは、製造メーカーが提供しているビケ部材のCADデータを私が使いやすいように手直ししたものです。
 足場品質は、設計品質に依る所が大きいと書きました。設計品質は、事前調査でもたらされた情報の正確性に依拠します。CADを利用して、現地調査から打合せ、足場計画図の作成、部材の積算と施工までの一連の流れをサポートすることができます。

●CAD図面作成サービスとは
 当社には、CAD図面を作成する担当部署があります。
 そこでは、汎用ソフトであるAUTO CADをベースに足場の設計図面を作成しています。図面の作成だけでなく、労働安全衛生法88条の大規模工事に伴う申請や道路占用許可申請などのお手伝いも行っています。
 お気軽にご相談ください。(文と図・松田)