足場のメッシュシート

足場には必ず、メッシュシートを設置しなければならないのですか

(2017年3月30日 掲載)

 ● メッシュシートの施工例
:シート施工例 :シート施工例
 労働安全衛生規則は、平成21年の足場関係の改正で、作業床からの物体の落下防止措置として、高さ10㎝以上の幅木、メッシュシート、防網などの設置を義務化しました(563条)。 ここでは、メッシュシートの設置は、唯一無二のものではなく、幅木など同等の措置(選択肢)のひとつと考えることができます。 また、これらの措置が「著しく困難な場合」や「作業の性質上、臨時に取り外す場合」で「立入区域を設定したときは」措置そのものも免除されます。
 このように、足場工事でのメッシュシートの設置は、法令上、必須のものとして規定されているわけではありません。
 なお、平成21年改正までは、防網の設置や立入区域を設定するなどの一般的な措置を義務付けていただけで(労働安全衛生規則537条)、具体的な法令上の規定がありません。
 ところで、これらの措置は、当該現場で働く労働者の危険を防止する観点から定められたものです。
 一般に、メッシュシートは工事現場周辺に危害を及ぼすことを予防するために設置します。 また、落下物は、作業床だけでなく、屋根などの建物からも飛来することがあります。
 国土交通省は、旧建設省時代の平成5年、主として第三者に対する危害防止の観点から「建設工事公衆災害防止対策要綱」という通達を出しています。
 そこでは、「外部足場から、ふ角75 度を超える範囲または水平距離5メートル以内の範囲に隣家、一般の交通その他の用に供せられている場所がある場合には、落下物による危害を防止するため、足場の必要な部分を鉄網若しくは帆布で覆いまたはこれと同等以上の効力を有する防護措置を講じなければならない」としています。
 外部足場からふ角75度を超える範囲とはどういうことでしょう。
 道路や隣家からの水平距離をAとした場合、外部足場の高さがtan(75度)×A≒3.73Aを超える場合は、5m以上離れていても外部足場を鉄網やシートで囲む必要があることになります。
 建築基準法施行令にも同様の規定があります。
 「建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が5m以内で、かつ、地盤面から高さが7m以上にあるとき、その他」「落下物によって工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは」「工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない」(第136条5)。
 この場合は、境界から5mの範囲に、7m以上の高さの建築物があると(足場ではない)、外部足場を鉄網やシートでおおうか、工事現場周囲を仮囲いで囲むことになります。
 また、厚生労働省の通達である「足場先行工法のガイドライン」(平成8年に発布、平成18年改正)には、次のような記述があります。
 「足場先行工法においては、建方作業後壁つなぎ等による足場の補強が完了するまで、原則として、シート等を設置してはならない。」 「建方作業後は、屋根及び足場の作業床等からの材料、工具等の飛来落下による災害を防止するため、シート等を設置することが望ましい。」
 このように、メッシュシートの設置は、法令上、必須絶対のものではありませんが、建築物や足場からの飛来落下を防止するために望ましいとされ、隣家や道路に近接した場合には、第三者への人的物的危害を防止する観点から当然に、その設置が必要とされます。
 なお、メッシュシートは、その材質や取付方法などに仮設工業会の認定基準があるほか、具有すべき防炎性能が消防法で定められています。
 メッシュシートの設置で留意すべきは、風荷重により足場が倒壊する主な原因となることです。このため、メッシュシートの設置は、足場の補強と同時並行で行わなければならず、補強が不十分な状況である建方作業前の先行足場では、原則としてシートを設置してはならないことになっています(足場先行工法のガイドラインほか)。 (文・松田)

労働安全衛生規則 第563条(作業床)
 事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ二メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。
(一~五 略)
六 作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、高さ十センチメートル以上の幅木、メッシュシート若しくは防網又はこれらと同等以上の機能を有する設備(以下「幅木等」という。)を設けること。 ただし、第三号の規定に基づき設けた設備が幅木等と同等以上の機能を有する場合又は作業の性質上幅木等を設けることが著しく困難な場合若しくは作業の必要上臨時に幅木等を取り外す場合において、立入区域を設定したときは、この限りでない。
建築基準法施行令 第136条の5(落下物に対する防護)
2 建築工事等を行なう場合において、建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が五メートル以内で、かつ、地盤面から高さが七メートル以上にあるとき、その他はつり、除却、外壁の修繕等に伴う落下物によつて工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは、国土交通大臣の定める基準に従つて、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない。
建設工事公衆災害防止対策要綱 建築工事編(平成5年1月 12 日 建設省経建発第1号)
第 27(外部足場)
 施工者は、外部足場の倒壊及び崩壊を防止するため、外部足場の計画に当たっては、想定される荷重及び外力の状況、使用期間等を考慮して、種類及び構造を決定するとともに、良好な状態に維持管理しなければならない。特に、外部足場と建築物の構造体との壁つなぎは、工事現場の状況に応じて水平方向及び垂直方向に必要な数を堅固に行うとともに、足場の脚部は、滑動防止の措置を講じなければならない。
2 施工者は、外部足場の組立て及び解体に当たっては、事前に作業計画を立て、関係者に時期、範囲、順序等を周知させ、安全に作業を実施しなければならない。
3 施工者は、外部足場から、ふ角75 度を超える範囲又は水平距離5メートル以内の範囲に隣家、一般の交通その他の用に供せられている場所がある場合には、落下物による危害を防止するため、足場の必要な部分を鉄網若しくは帆布で覆い又はこれと同等以上の効力を有する防護措置を講じなければならない。この場合において、鉄網、帆布等は、足場骨組に緊結し、落下物による衝撃に十分耐えられる強度を有するものとし、鉄網、帆布等を支持する足場の骨組も、当該衝撃に対し、安全なものとしておかなければならない。
足場先行工法のガイドライン
(13) シート等
イ 足場先行工法においては、建方作業後壁つなぎ等による足場の補強が完了するまで、原則として、シート等を設置してはならないこと。
ロ 建方作業後は、屋根及び足場の作業床等からの材料、工具等の飛来落下による災害を防止するため、シート等を設置することが望ましいこと。
ハ シートを設置する場合には、シートの自重及び風荷重を考慮して足場を十分に補強すること。
二 シート等は、足場の建地、布等の間隔に応じた寸法のものを使用すること。
ホ シートは、すべてのハトメで容易に外れないように足場に緊結すること。
へ シートは劣化したもの、破損しているもの等は使用してはならないこと。